ボクの欲しいと思っていたもの
そのメルマガのタイトルはとても魅力的だった。
だった、というか、今でもそれを追い求めているかも。
そのタイトルは
「何もしないで月50万!幸せにプチリタイヤする方法」
今このタイトルをタイプするだけで心がザワつくくらい。
50万円も毎月遊べるお金があったら何でも出来る。
時間を気にせずに遊ぶことが出来る。
好きなところに好きなだけ行ける。
何より。
「会社に行ってイヤなやつに頭を下げなくて済む!!」
当時のボクは、周りの人達がみんなそういう風に見えていた。
あっという間に虜になった。
コンテンツを作った方のセミナーに参加した。
生まれて初めてだと思う、セミナーに5000円を支払った。
プチリタイヤする為に自分なりに頑張ってもみた。
セミナーに行く、商材を探してみる。本を読む。やろうとして大きな問題があった。
時間が足りない。セミナーで1日最低でも14時間頑張らないとゴールにはいけないと言っていた。焦る。
会社員をやっていてはとても間に合わない。
いつまで経ってもゴールに着かない。もう30歳。後がない。
頑張るには時間が必要なんだ。
それを邪魔するものは・・
そしてボクは会社を辞めた、そして案の定の結果が待っていた。
長男が生まれて二ヵ月後、会社を辞めた。今思えば熱に浮かされての行動だろう。でも当時のボクには他に選択肢が無いように思えていた。
辞める!と勢いよく会社を飛び出したものの、何せ人脈、コネ、商材、ネタ。何より、何をしたいか?が無い状態。
自分に残ったのは自由な時間という名の引きこもり生活だった。
自由になったらアレがしたい、ココに行きたい。
そう思っていた。会社員の時は本気で。
いざ本当に自由だと思っていた時間を手に入れた途端、それすらにも手を出さなくなった。
収入が無い状態、少しばかりの退職金と失業手当。
減っていく残高。そんな状態はとても自由とは思えなかった。どこかに出かける、財布を出す。それだけでプレッシャーだった。
ただ、ボクには唯一すがるものがあった。
ココプラというSNSだ。
人の悪口を言わない。それがそのSNSの唯一のルール。
ボクはプチリタの関係者が運営していたそのSNSに入り浸った。
半年の間、色々なオフ会や合宿に参加して、様々な出会いがあった。みんなキラキラしているように見えた。毎日色々な事がありながらも充実していて羨ましかった。
既に気づいていた。このままではどうにもならないと。
だけど、認めたくなかった。だから悪く言われないで済むその空間にいた。
そんな中、とあるオフ会の企画を聞いて参加した。
大阪でメンバーの一人がライヴをやるから見に行こう。
当時ボクの繋がりの無い人だ。
そこでボクは一人のミュージシャンと出会うことになる。
その歌声は強烈だった。
それまでボクが好きだった歌手はTMNや電気グルーヴ。電気的な音楽を好んで聴いていた。
最初の印象は、なにこの声?歌い方?聞いたことが無い、だった。彼はギターを爪弾き、自分の声を楽器にしていた。
なんだかよく判らない、けど、凄いことだけはわかった。
勝手に肌があわ立ち、ドキドキして、手拍子をするのも忘れるほどに浸っていたい。そんな歌声だった。
歌って、ホントは凄いんだなぁ、と思った。
当時の彼はまだアマチュアだったと思う。そのライヴから少しして彼が海外から日本に戻ってきて、プロになると聞いた。
衝撃だった。
40歳を、過ぎていて、今から、歌手としてデビューする。
会社員としてのキャリアを捨てて、自分の好きなことをして生きていく。
痺れた。憧れた。今でも憧れている。
30歳で後が無い、と焦っていたボクにとってそれは大きな標だった。
そしてボクは1年続いたマダオ(MまるでDダメなOおっさん)としての自分に決着をつけた。
大げさなことも何も無く、ただ単純に、一つの決意をしただけだ。
僕の中の大きな大きな背中、ユウサミイに向けて。
第3話に続きます